吉野杉は、主に奈良県の吉野林業地帯が産地の杉のことをいいます。
その歴史は長く、室町時代に大和三輪と春日山の杉を移植したことから始まりました。
現在は、秋田杉、木曽桧とならび日本三大美林の1 つとしても有名で、その耐久性や強さ、美しいツヤは、古くから人々に愛されております。
また、節がないことも吉野杉ならではの特徴です。
年輪が細かく均一なため、木目が縦にはっきり均一にでるのです。
そのため、お箸はもとより、建築材料としても高い評価を受けていましたが、今や杉全体が外材の進出・代替資源の影響であまり使われなくなり、山に間伐材が放置されるようになっています。
弊社は、すでに多くの業者が取り組んでいる「端材利用」から、
もう一歩進んだ「杉全体を利用する新たな取り組み」について考えています。
杉の中央部分には小さな節や木目の粗さ、素性の悪さなどがあり、割り箸として使うには不適格です。
そのため、今までは杉の外側だけを割り箸に使用してきました。
それがいわゆる「端材利用の割り箸」であり、先人の叡智ともいえるものです。
しかし、外材の進出・代替資源の影響によって杉自体があまり使われなくなってきた現在、多くの間伐材が山に放置されるようになりました。
今後は端材だけでなく、杉すべてを割り箸に利用しないといけないのです。
弊社では、中央部分でも割り箸に適している部分は割り箸に、
適していない部分は他の木工品の材料に使うことで、杉全体を使い尽くすことを考えています。
こうして作られた割り箸やその他の製品を購入していただくことは、自然に日本の森林にお金を戻すことにつながります。一本の杉に付加価値をつけるこの取り組みは、山の保全・健全育成につながると確信しております。
「割り箸一本で、△△円を山や関係団体に寄付します」というやり方もありますが、
杉製品を実際に使っていただくことで森林に価値を還元できる方法が、一番自然で長続きすると考えています。
現在、「割り箸を使わずにマイ箸を使う」というエコ活動がありますが、そもそもこうした運動は「割り箸の存在自体がモッタイナイ」という考えに基づいています。
確かに、単価の安い輸入品のなかには「割り箸用」に伐採されているものもあるかもしれませんが、国産材の割り箸は間伐材や端材などを有効利用して作られている製品です。資源の問題から「割り箸が悪い」と決めつけるのは、少し短絡的なように思います。
ここで、少し日本の林業に目を向けてみましょう。
現在、日本の林業は衰退の途にあり、国内にはきちんと手入れの行き届いていない人工林(針葉樹林)も少なくありません。こうした森林では樹が健やかに成長できず、自然な落葉も少ないことから山自体の保水力が落ち、土砂崩れや洪水などの災害の原因となっています。しかし、国産材がもっとうまく活用されるようになれば、消費と循環のバランスが整い、樹は健やかに成長できるようになって、災害なども起きにくくなるでしょう。そのために必要なのは、国産材を使った製品を購入して使うことなのです。
木で作られる製品は多くありますが、その中でも一番シンプルで身近な存在なのが割り箸です。国産材で作られた割り箸を購入することは、他に用途のない端材に「割り箸」という付加価値をつけ、森林に価値を還元することにつながります。つまり、国産材の割り箸を購入することで、誰でも気軽に「国産材の循環」に貢献することができるのです。
木の箸は立派な日本文化のひとつ。割り箸であっても、日本の食文化を守っている大切なアイテムであることに変わりはありません。また、防腐剤などの薬品が使われていない割り箸は、安全性に優れた製品です。さらに、上質な国産の杉や檜でできた割り箸は、木肌の風合いが感じられるとともにほんのわずかですが木の香りもします。そんな箸で食べるお茶漬けやお蕎麦は本当に粋なものです。料理にこだわりのある店舗のなかには、国産材の割り箸を好んで使用しているお店も多いでしょう。
堅い話はさておき、「上質な国産材で作られた割り箸で、食事の際に繊細な香りを堪能する」というのも、日本の食文化を楽しむ方法のひとつ。お客様にお食事をより楽しんでいただくためにも、吉野杉で作られた弊社の割り箸をぜひお使いください。